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【話題】新型コロナ、日本では「感染爆発」しない⁉ 実は 私たちは 免疫を持っている…


去る 3月11日、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と ドイツのメルケル首相は、警戒を呼びかけました。果たして そんなことが本当に起こりえるのでしょうか?

これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないでしょう。しかし、そうはならないとも 考えられます。その理由は 新型コロナの感染拡大パターンにあります。

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新しい感染症が入ってくるとどうなる⁉

メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいています。

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読売新聞

ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方があります。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのです。すると、一定の未感染者を 残しながらも、感染拡大は 停止します。ウイルスの感染力が弱まって 感染拡大が止まるわけではありません。point 305 | 1

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60%から70%が感染のカラクリ⁉

ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼びます。これが 1より大きければ感染は拡大し、1であれば 感染は定常状態となり、1未満になれば 感染は終息に向かいます。

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新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数は だいたい 2~3といわれている。

日本経済新聞

計算式に当てはめると、基本再生産数が 3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに 67%が感染することになります。

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メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろうと思われます。しかし、これは集団が 新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいているのです。

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実は 私たちは 免疫を持っている⁉

2009年に パンデミック化した新型インフルエンザを思い出してみてください。基本再生産数が 3だったとしても 国民の6~7割が感染するようなことはありませんでした。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと考えられます。

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そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に 子供の風邪のウイルスとしてありふれたものです。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が 年に1,2回は感染しています。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。

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また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数います。日本には春節前から 多くの中国人が訪れていました。あくまで 推測の域をでないが、既に日本人の多くが 自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した 集団免疫の作用で 感染爆発は起こり難いでしょう。

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point 0 |
Wired

またメルケル首相の発言には「仮に政府が何の対策をとらなかったら」という仮定も入っています。しかし、日本も含め多くの国が 既に強い対策に打って出ており、また人々は 行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えています。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものです。point 218 | 1

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新型コロナの感染パターン

去る 3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表しています。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した 二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用すると…。

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「現時点において、感染者の数は 増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は 日によって変動はあるものの概ね 1程度で推移しています」

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日本経済新聞

新型コロナの基本再生産数は 2~3であり、対して、実効再生産数は 1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということです。

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実効再生産数が1ということは、10人の患者から 新たに10人の二次感染患者が再生産されることになります。しかし、専門家会議は「80%が 誰にも感染させていない」としています。

だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまいます。

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新型コロナの場合、確かに だれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けています。しかし、私達は今までの経験からアクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っているのです。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときです。

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エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす⁉

3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が 指摘されました。

1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。

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これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて 日々の感染者数は数十人で収まっています。

ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず 日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々でしょう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは 上記1・2・3にあてはまるからです。

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そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説すると…。

会話やくしゃみで 飛沫が飛び散ります。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちます。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは 数時間室内を空気のように浮遊します。

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CNBC.com

大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応します。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できます。

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エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応します。新型コロナウイルスは 1時間で半減するものの、数時間は 感染性を保ったまま エアロゾルとして空中を浮遊することが 最近アメリカの研究チームにより報告されました。これは 窓を開けて空気を入れ替えれば、解消されます。外であれば、まず問題になりません。

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人数が 数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがります。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生が ほとんどない地域では 気にしなくてもよいかもしれません。

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「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば 避ける必要はない」ということです。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになります。

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1人1人ができることをやっている成果⁉ 今後の日本は 如何に…

2月後半、1日の報告件数が 10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は 在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請しました。

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患者数の推移を 海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思います。これは政治決断の効果でもあり、日本人 1人1人ができることをやっている成果であるとも思います。

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Forbes JAPAN

今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や 換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないでしょうか。とはいえ、大規模イベントや、今まで クラスターのあった場所での活動の再開は 慎重にするべきでしょう。

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危機管理の基本は、初動において 厳しい対応をして、様子を観ながら 徐々に緩めるのが 鉄則です。