森下愛子さん。誰もが知る女優ではありませんが、その演技は見るものに鮮烈な印象を与えて記憶にしっかりと爪痕を残す…そんな女優の代表といえるのでしょう。今もTBSの「監獄のお姫様」に出演するなど、来年還暦を迎えるベテランの存在感はまだまだ健在。その魅力の源泉をたどってみましょう。
映画「サード」で一躍有名に
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森下愛子さんのデビューは1977年の映画「地獄の天使紅い爆音」でした。多くの映画ファンに衝撃を与えたのは、1978年に出演した東陽一監督の映画「サード」でしょう。奔放な高校生役を見事に演じただけでなく、大胆なヌードシーンも披露。主演の永島敏行さんとともに一躍脚光を浴びました。その後も、森下さんの快進撃は続きます。
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1979年に「十代恵子の場合」で映画初主演を果たし、「もっとしなやかにもっとしたたかに」「18歳、海へ」など、当時の若者の青春と性を描いた問題作に相次いで出演しました。あの小悪魔的な瞳と、キュートな裸体に心を奪われた若者は相当いたはずです。
クドカン作品で女優としての新たな境地に
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しかし、デビューからちょうど10年目の1988年に病気で体調を崩し、芸能活動を10年間休止します。しかし、活動を再開した99年以後、クドカンこと宮藤官九郎さんの作品の常連となり、一気に演技の幅を広げます。2002年のTBS「木更津キャッツアイ」で、ストリッパー役の「木更津ローズ」は、その後の映画シリーズでもハマリ役でした。「タイガー&ドラゴン」「流星の絆」「うぬぼれ刑事」と続き、クドカン色が全開となった「ごめんね青春」では亡くなった主人公の母親の霊が宿った観音菩薩で登場。コミカルな演技とナレーションにも注目が集まりました。見るものを「挑発」する若手女優から、クドカン作品との出会いで女優としての新たな幅と境地を大きく広げました。
夫はあの伝説のシンガーソングライター・吉田拓郎さん
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森下愛子さんの話題としてよくメディアで取り上げられるのは、夫があの伝説のシンガーソングライター・吉田拓郎さんということです。1986年に結婚しているので、間もなく30年目。長く夫婦生活を続く理由を、拓郎さんはメディアに「妻(森下さん)のおかげ」だと語っています。吉田さんは2003年に肺がんがみつかり、その後もメンタルにダメージを負いました。そんな吉田さんの長期にわたる闘病生活を全力的に支えてきたのが森下さん。自らも苦しい思いをしてきたからこそ通じ合う夫婦愛なのでしょう。
失うことのない役者のオーラ
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「監獄のお姫様」も宮藤官九郎さんの脚本です。演じる足立明美役は「姉御」と呼ばれる元暴力団夫人。刑務所では牢名主のごとく泰然と構え、現代シーンでは「女の敵」役の伊勢谷友介さんを楽しそうにいたぶる明美は、共演する小泉今日子さんや満島ひかりさんに劣らぬオーラを発しています。ますます円熟味を増す森下愛子さんには、これからもクドカン作品で大暴れしそうな予感が漂います。