フランスのテレビ局「BFMTV」で、中国の新型コロナウイルスの犠牲者追悼式典の様子が放送された際、同番組の論説委員が「ポケモンを埋葬している」と発言し、人種差別だとして大きな批判を浴びました。
「ロプス」「リベラシオン」「フィガロ」など、フランスの複数のメディアが報じています。
「不適切な発言だった」と謝罪も出演停止⁉
4月4日、フランスのテレビ局「BFMTV」の朝の番組で、中国でおこなわれた新型コロナウイルスの犠牲者に対する追悼式典の様子が報じられました。
その際、スタジオにいた論説委員のエマニュエル・ルシプルが「ポケモンを埋葬している」と発言し、ツイッターを中心としてSNS上で大きな批判を呼んだのです。こうした批判を受け、論説委員は 自身のツイッター上で、不適切な発言であったと認め、謝罪しました。
「今朝、BFMTVで中国でのウイルスの犠牲者に対する追悼式典の放送中に、まったく場違いな発言をしてしまいました。これらの不適切な発言は番組中で放送されましたが、マイクが入っていないと思っていました。心よりお詫び申し上げます」
ルシプル論説委員は「BFMTV」の番組中でも謝罪しました。
同テレビ局の社長マルク=オリヴィエ・フォジエルもツイッター上で謝罪。テレビ局はプレスリリースを発表し、ルシプル論説委員の1週間の出演停止を発表しました。
在仏中国大使館は「激しい不満の意」を表明… ポケモン=アジア人⁉
追悼式典は、清明節という先祖の墓参りをする中国の祝日に合わせておこなわれたものでした。それだけに、不謹慎な発言は中国側から強い反発を招きました。在フランス中華人民共和国大使館は同日すぐに反応し、公式ホームページで声明を発表して、「激しい不満」を表明しました。
「今日は清明節。中国人にとっては死者の慰霊のための内省の日です(…)こうした時期にBFMTVの論説委員によって発せられた死者への敬意を欠く発言は、不適切なものです。在フランス中国大使館はこの件に関し、激しい不満と糾弾の意を表明します(…)われわれは、あらゆる差別的および人種差別的な発言および行為に反対します」
中国のテレビ局「CGTN」は、論説委員の発言を取り上げ、「ポケモン」と人種差別の関係を次のように分析しました。
「 通説によれば、フランス人ジャーナリストが用いた ”ポケモン”という単語の使用は、アジア人の肌色に似ているアニメのキャラクターの黄色い肌色を思わせるものだ。こうした連想は人種差別として広く認められている 」
日本人も人ごとではない…差別発言の標的に⁉
実際、フランスのメディアでは、過去にもポケモンのキャラクターを引き合いに出してアジア人への差別発言をおこなう例がありました。2016年リオデジャネイロオリンピックでは、日本人が差別発言の標的となっています。
フランスの 公共放送「フランス2」で放送された 体操女子団体の決勝で、コメンテーターを務めていた 北京オリンピックの銀メダリスト、トマ・ブエルが日本の女子選手を「小さなピカチュウ」と呼び、批判が殺到しました。
「レクスプレス」誌の報道によれば、ブエルは 「私の発言が誤解を生むもので、それに傷ついた人々がいるのだとすれば、日本の女子チームに謝罪したく思います」と、不完全ながら謝罪をしています。
新型コロナウイルスの危機では、世界各国で アジア系住民に対する差別意識が 顕在化していると言えそうです。