かなしろにゃんこさんの息子さんのリュウ太くんは、ADHDと広汎性発達障害があり、大のおっちょこちょいです。大事な場面でいつも何かをやらかしてしまうのですが、まさかの晴れの日にトホホな失敗をしてしまったのです。しかし、その失敗は、この親子にとって、ちょっと感慨深いものだったのです。

晴れの日の失敗

ADHD（注意欠陥・多動性障害）と広汎性発達障害がある息子のリュウ太くんは、とてもおっちょこちょいです。髪に寝ぐせがついていても、洋服の着方や襟が乱れていても、細かいことを気にしない男子です。そんなリュウ太君が人生の晴れ舞台でとある「失敗」をしてしまったのです。

小学校最後の日のこと。晴れやかな朝、卒業式用に正装したリュウ太くんをご両親は送り出しました。慣れないシャツやジャケット姿のリュウ太くんに、「お手洗いに入った後は、必ずシャツをズボンの中にしまいなさい」と注意しました。そんな心配をよそに、リュウ太くんはと言うと「はいはいわかったよ〜」と自宅を出て行きました。point 210 | 1

いよいよ卒業式が始まりました。一人ずつ卒業証書授与のために順々に呼ばれ、壇上に上がる卒業生たち。リュウ太くんの名前が呼ばれて、元気よく返事をしたかと思ったその時です。ご両親の目に飛び込んできたリュウ太くんの姿は、なんとジャケットの下から白いシャツがベロ～ンっと丸出しになっていたのです。

「コレ、わざと着くずしてんだ」っていうオシャレ上級者だったとしても…卒業式にそれはないはずです。かなしろにゃんこさんと旦那さんは「アイツやりやがった…」と赤面しました。しかしその反面「まぁ、リュウ太らしいか…」と納得して、２人で顔を見合わせて笑ってしまいました。

感情の変化と成長

かなしろにゃんこさんはこのことをリュウ太くん本人に聞いてみました。すると意外な言葉が返ってきました。卒業証書授与の後に、先生からシャツが出ていたことを教えられたリュウ太くんは、恥ずかしくってたまらなかったそうなのです。シャツが出ていても気にしていないと思っていたのですが、そうではありませんでした。「体育館に行く前に、服装の乱れを全員でそれぞれ確認したのに…。急いでトイレに行ったときにしまい忘れた。恥ずかしい～！」と、本人は落ち込んでいたのです。point 232 | 1

これまではそんなことを気にしなかったリュウ太くんでしたが、恥ずかしいという感情が芽生えたその姿を見たかなしろにゃんこさん、リュウ太くんの成長を感じずにはいられなかったそうです。

さらに、小学校の門を出る際に、４年生の時に担任だった先生にお別れのあいさつをしました。発達障害の診断のために提出する書類作成に協力してくれた先生です。厳しく怒るけれど、励ましてくれたり褒めてくれたりする熱血先生。何かと面倒を見てくれる先生が大好きで、４年生の頃のリュウ太くんは先生にベッタリでした。一見恐く見えるけれど、リュウ太くんはなぜか子猿のようになついていたのです。きっとそれは「先生は真心で怒ってくれているんだ」と、感じていたからなのかもしれません。point 229 | 1

しかし６年生にもなると、母親に側で見守られるのも照れ臭いだろうと思ったかなしろにゃんこさんは、先生とお別れするリュウ太くんの様子を少し離れたところで見ていました。リュウ太くんがあいさつに行くと、先生の横にはやっぱり先生にベッタリな男の子がくっついていました。

それを見たリュウ太くんは、「先生ありがとうございました」と泣きながらさよならを言ってお別れしました。きっと「もう自分はベッタリできないな」と思ったのかもしれません。「中学生になっても、こんな風に熱血な先生にまた巡り合えるといいね」とかなしろにゃんこさんまでホロリと涙しました。

中学生になって

その後、中学生になったリュウ太くん。担任の先生は熱血先生で、熱い指導をしてくださり、リュウ太くんはその先生が大好きになりました。そして、身だしなみの意識の方はというと、あれだけ気にしなかったリュウ太くんだったのに、今では毎朝スプレーで寝ぐせを直して、シャツの襟を直したりと、少しですが自分で整えるようになりました。

心の成長がゆっくりなリュウ太くんも、小学生から中学生になったこの時期に、人の目を気にするようになり変化が見られました。自分以外の人のことを意識することができるようになったなんて、「成長したな」と、かなしろにゃんこさんは思ったのでした。子供の成長は時に親以外の大人をも驚かせることがあります。リュウ太くんもこれからも、どんどん少しずつ大人への階段を登り、成長し、周りを驚かせ続けることでしょう。point 253 | 1

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