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買収の背景とは?押さえておきたい「スカイマーク・ana」の知識



写真:blogs.yahoo.co.jp

つい20年ほど前まで、日本人が利用できる国内航空会社は、わずか3つしかありませんでした。日本航空と全日空、東亜国内航空がそれです。日本は結構国土が広く、空港もたくさんあり、北海道や四国、九州および沖縄は本島と離れており、離島もたくさんあります。飛行機で移動すれば便利な地域はたくさんあったわけですが、飛行機は贅沢な手段であり続けました。それは、航空会社が3つしかなく、航空運賃が高止まりしていたからです。国内の鉄道会社には私鉄がたくさんあり、私鉄のほうが安いのは常識でした。現在のJRである国鉄と私鉄が並走している路線では、ほとんどの人が私鉄を使っていました。しかし、飛行機の場合はそうはいきませんでした。なにしろ日本全国で、航空会社が3つしかなかったのですから。ひとつの路線に1社しか就航していない路線のみならず、羽田大阪間のように、メジャーな路線で複数の航空会社が就航している場合でも、航空運賃は高止まりしていました。わずか20年ほど前のことです。それゆえ、今でも年配者の多くは、飛行機は高いというイメージを持っています。point 533 | 1

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写真:ibaraki-airport.net

そこに新風を送り込んだのがスカイマーク社でした。1996年に、3社独占だった日本の航空業界に、新たな1社が参入したということになります。3社独占というのはいかがなものか、ということで航空業界での規制緩和が始まったのは、1986年です。新規参入の航空会社が現れるまで、それから10年も必要だったということからも、それまでの状況がいかに堅固なものだったかがわかることでしょう。人々は、航空運賃がどこの会社を使っても同じであり、非常に高いのが当たり前だと受け止めている状態でしたから、今日のような状況になれるとは、起業家の多くも考えられなかったのでしょう。新規参入したスカイマークは、まさにベンチャーという扱いでした。しかし、航空運賃が半額であったことからまたたく間に人気を集めました。今でこそ、航空運賃が半額なら、人々が殺到するのは当たり前のことと考えられますが、その当時は違いました。飛行機を利用する人は、行き届いたサービスや快適さを重視するのであり、3大航空会社の優位性が変わることはないと多くの人が見ていたものです。ちなみに、当時の国際線キャビンアテンダントの収入は、OLのおよそ7倍でした。その経費を削って、航空運賃を下げてほしいと願っている人は、意外に少数派でした。
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写真:miyukix.net

成功するか危ぶまれていたスカイマークは大成功し、それを見ていくつもの航空会社が新規参入しました。新規参入した航空会社は、みな航空運賃を低く設定していたため、利用者がそちらに流れて、3大航空会社は経営が行き詰まります。それだけが原因でもありませんが、日本航空は事実上倒産しましたし、東亜国内航空もなくなりました。

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写真:hachi8.me

そして2015年に、anaがスカイマークを買収するという形になったわけですが、anaとスカイマークは、それまであまり仲が良くありませんでした。2002年と2008年に、スカイマークは、anaがスカイマークと同一路線同一時間帯の便だけ採算度外視の値下げをしているとして、公正取引委員会に対し意見書を提出しています。anaは同じような方法を他の航空会社に対してもおこない、その航空会社は破たんしています。2002年のときには、anaと日本航空が、そうした値下げを止めましたが、2008年のときには、anaは方針を変えず、かえって推進する方向に出ました。point 336 | 1

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写真:matome.naver.jp

スカイマークはその後、倒産します。anaに買収されることになったのは、スカイマークが望んだことではなく、債権者が決めたことです。スカイマークの登場で、日本の国内航空運賃が下がったことは、利用者にとって歓迎すべきことでしょう。

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