日本最大級のネット通販(EC)モール「楽天市場」ーー
ここに出店する一部の事業者が、モールの運営主体である楽天に対し反旗を翻していることが明らかになっています。
「自分たち中小出店者のことをボウフラ程度にしか思っていないのではないか」
「これ以上黙って見過ごせない」
「もはや商売にならないくらい利益を圧迫されてしまう」
「怒りと戸惑いしかない」
「楽天自身の直販部門や大手ブランド出店者ばかり優遇している」
今、楽天市場に対して怒りを爆発させている不満の声がこんなにも多く寄せられています。
楽天市場での「度重なる一方的な規約変更」に対抗するため、「楽天ユニオン」と称する出店者組合を10月初旬に設立。
これには、顧問弁護士も立て、施策に反対する署名活動や、楽天出店者トラブル事例収集、
それらを基にした公正取引委員会への情報提供などに向けて動き出しています。
また、同組合関連の連絡網には10月末現在、200近い出店者が名を連ねたそうです。
「ワンタリフ」構想とは?
出店者からの反発がとくに強いと指摘されているのは、楽天が今年1月に打ち出した「ワンタリフ」構想です。
「ワンタリフ」構想とは要するに、消費者が楽天市場内のどの店舗で購入しても、一定額以上であれば一律で「送料無料」とするもの。
これは、楽天市場への消費者の不満で、とくに多いのが送料体系のわかりにくさが指摘されたため、検討されたそうです。
また、8月にはその送料無料ラインとなる購入金額を3980円とすることが、楽天から発表されていることも新たに分かっています。
対象の配送地域は日本全域
楽天市場において、ユーザーが楽天市場の各出店店舗で一度に 3,980円(税込)以上の買い物をした場合に送料が無料となる、共通の送料無料ラインを導入することが公表されました。
共通の送料無料ラインは、対象の配送地域を日本全域とし、メール便・宅配便(160サイズ以下)で配送される商品を対象に、2020年の年初を目処に導入される予定とのことです。
送料は基本的に出店者負担
楽天市場に限らず、最近ではネットショッピングをする人も増えてきたでしょう。
やはり消費者側の立場に立ってみれば、商品を購入する際「送料無料」は大きいですが、
人がその商品を運んでいる以上、送料は「無料」であるはずがありません。
消費者にとって無料となれば、その分を出店者が負うことになるのは当然のことです。
これまでは送料無料ラインは出店者ごとに自由に決められたのですが、今回からは送料無料ラインを3980円に統一しなければならず、かつ、基本的にはすべて出店者負担となる見通しとなりました。
これらの問題を受け、出店者からの批判の声がたくさんあがっており、
「利幅の薄い商品は厳しい。品目を絞るか、退店するしかない」(食品や雑貨を扱う出店者)、
「多くの店舗が送料分を価格に転嫁すれば、楽天での販売価格は全体的に他モールより高くなるはず。楽天市場自体の魅力低下につながるのでは」(家具を扱う出店者)
などと、出店者からはこうした不安が噴出しているというわけなのです。
「わかりやすさを実現」
今回の施策公表に際して楽天からは次のようなコメントが出されています。
「『楽天市場』では、変化するユーザーのニーズに対応し、より多くのユーザーにご利用いただけるサービスを実現するため、さまざまな施策に取り組んでいます。送料についてはこれまで『送料が分かりにくい』『送料が原因で購入を断念した』というユーザーからのご意見を多数いただいてきました。送料についての共通ルールを導入することで、『楽天市場』におけるお買い物のわかりやすさを実現します」
楽天の三木谷社長は2019年初頭の楽天新春カンファレンスにおいて楽天市場の送料について、
一律の基準と送料無料ラインを設ける旨の発言をしており、それがいよいよ具体化した形となりました。
楽天が国内でも有数の巨大ECプラットフォームであることは言うまでもないが、
これまで国内においても競合のAmazonに対して苦戦を強いられてきました。
その要因の一つが送料のわかりにくさであり、特に送料無料ラインが不明確である点だったといいます。
これはAmazonがマーケットプレイスを主軸として自社で商品を仕入れる形式であるのに対して、
楽天はあくまで原則として各ショップの集合体であり、物流に関しては各ショップの事情が優先されてきたからです。
つまり送料に関する一律の基準と送料無料ラインの設定はそのプラットフォームの構造上、
極めて難題でありましたが、ここへ来てその難題解決に向けてついに動き出したことになるのですね。
自社ECを強化する出店者も
出店者の中には自社ECを強化する戦略に舵を切り、ECモールへの依存度を下げようとする動きも出始めているといます。
とはいえ、楽天やアマゾンの集客力はなおも絶大であり、
楽天ユニオンへの参加メンバーにも「やめるにやめられない」という出店者は少なくありません。
「楽天には感謝している部分もある。実店舗の売り上げがどんどん低迷してきたときに、ECがなければ人生終わっていたかもしれない。今の楽天のやり方には賛同できないが、昔のように、規約をころころ変えない”大人の会社”に戻って、また一緒に成長を目指したい」
組合活動の中心メンバーの一人はそう話しました。
携帯電話事業などにも挑戦が広がる中、基幹事業である楽天市場の安定と信頼獲得はより重要性を増す。
少なからぬ出店者との間に生まれてしまった亀裂を修復する必要があるでしょう。
有言実行の楽天がはたして送料の新スキームを通して市場からどういった反応を得られるか今から注目と言えそうですね。