今月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で支援やロシアへの経済制裁強化を訴えかけました。
しかしこの演説が、大きなリスクを招きかねないとの見方を示すと専門家は話します。ゼレンスキー大統領はこれまでイギリス議会での演説を皮切りに、NATO加盟国を中心に演説を行っています。ロシアのプーチン大統領を研究する、筑波大学教授の中村逸郎さんは 「プーチン氏から見れば、日本は戦闘中の敵国の大統領に国会で演説させたわけで、ゼレンスキー氏を讃えていると捉えられかねません。 現在、経済制裁によってロシアのスーパーからは食料品や日用雑貨が姿を消すなど、日に日に市民生活が厳しくなっています。かつてないほど苛烈な経済制裁を科した西側諸国に、プーチン氏は怒り心頭。日本はその一員と見られ、怒りの矛先は確実に日本にも向いているのに、演説はその火に油を注ぐことになるでしょう」 と解説したのでした。
ゼレンスキー大統領の国会演説前から、ロシアにとって日本は“要注意国”の1つになっており、今月7日にはロシアは自国への経済制裁を行う「非友好国リスト」を公表しています。
そこには、アメリカ、EU全加盟国とともに日本も含まれています。その翌日に、日本政府はウクライナの要請に基づき、防弾チョッキのほか、防衛装備品の提供に踏み切りました。こうした装備の海外移転は「防衛装備移転三原則」により規制されますが、政府は運用方針を変更してウクライナに無償供与することを決めました。
中村さんは「日本政府の対応を受けてか、プーチン氏はすぐに日本に向けて動きをみせました。3月10日、北方領土の択捉島でミサイルを使った軍事演習を始めた。11日にはロシア海軍の艦艇10隻が津軽海峡を通過して、15日にも4隻が通過しました。ウクライナに向けて兵士や武器を輸送しているようですが、日本への威嚇も兼ねているとみられています」と話します。さらには、ロシア外務省は、日本との平和条約締結交渉を中断すると発表し、北方領土への旧島民の墓参りなどを目的とした日本とのビザなし交流の停止や、北方領土での日本側との共同経済活動に関する協議から撤退する意向を表明しました。
「ロシアは非常に強い圧力を日本に加え始めています。プーチン氏から見れば、同じ“隣国”でも日本はウクライナより格段に攻めやすい。もはや日本はロシアの敵対国とみなされている」と中村さんは解説します。
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