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百田尚樹のノンフィクション小説「殉愛」は疑惑のデパート!


「殉愛」とは2014年に作家である百田尚樹氏が、関西を中心に活躍したタレント兼歌手のやしきたかじん氏が食道がん再発後死亡に至るまでの最晩年の生活を描いたノンフィクションスタイルの作品です。発売当初からアマゾンの評価欄に多数のコメントが殺到し、販売数を伸ばす一方で、関係者を中心に作品内容に関して疑義が広がり、後日には指し止めを請求する裁判まで提訴されるに至ります。「純愛」を巡る疑惑は何なのか、裁判を巡るトピックと、関係者による反論などの視点を通じて御紹介しましょう。なお、以下は敬称略です、ご了承ください。

 

たかじんの長女による差し止め裁判の経緯と判決


写真:Naverまとめ


写真:正しい歴史認識

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たかじんの未亡人Sについては、たかじんからのプロポーズを受けた時期にイタリア人男性と婚姻関係にあったことから少なくともたかじんとは不倫関係にあったと推測されますが、この事実については「殉愛」では触れられていません。

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写真:bunbun38.xsrv.jp

この点については後日、作者の百田氏は「書くか否かについては、大いに迷った」と発言しています。

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本書の内容について最も劇的なアクションとなったのは、たかじんの長女が出版元の幻冬舎に対して提起した同書の差し止めと損害賠償を請求した民事裁判です。

裁判では長女からたかじんに対して食道がんになったのは自業自得、とのメールを送付してたかじんから絶縁されていたとの内容、闘病中のたかじんに金の無心を繰り返した、闘病中のたかじんを一度も見舞うことなく、Sを誹謗中傷するメールを送りつけたとの内容、たかじんの死後に開催された偲ぶ会において、Sに対し罵声を浴びせた等の殉愛の記載内容はいずれも虚偽であり、一方的な取材源の内容に偏波した作品であるとの主張を展開しました。point 278 | 1

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特にノンフィクションを謳った作品であるにも関わらず、たかじんの長女や親族への取材が一切されていないこと、内容は無償の愛を注ぎ相続においても謙虚な姿勢に努めてきたとの基調は事実に反しているばかりか、フィクションの要素が多分にあり、長女の名誉毀損やプライバシー権を侵害するものとの主張が展開されています。

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判決と、関係者への取材を元に迫った「殉愛」を巡る疑惑


写真:Twitter

長女が提訴した損害賠償・差し止め請求の裁判の帰趨ですが、東京地裁は2016年7月29日に本書の記載内容には7カ所について虚偽がある旨を認め損害賠償の支払いを命じました。

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その後の控訴審の東京高裁でも一審判決が支持されて増額した損害賠償の支払を命じています。
なお差し止め請求については、いずれの裁判所においても棄却されています。


写真:Twitter

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長女の裁判とは別にライターや放送業界関係者、週刊誌記者などが中心になって、たかじんの親族などへの取材を通じて、「殉愛」の内容の真実性を追及する書籍が2015年11月に発売されています。
この作品のポイントは「殉愛」では取材されなかったたかじんの生前のマネージャーK氏や前妻に対しても取材を敢行している点にあります。

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Kの証言によると百田尚樹の「殉愛」に書かれているたかじんとSとのなれ初めに関してからして、事実は異なるとされています。
「殉愛」ではSのフェイスブック経由で頻繁に連絡を取ったのはたかじんサイドとされていますが、Kの証言によると事実は全く逆でSが熱烈にアタックして計画的にたかじんに接近を図った形跡が見て取れます。

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さらにたかじんの弟にも取材を試みており、百田尚樹の「殉愛」では生前のたかじんは一切、親族との関係を断ち切ったような記載がありますが、これも事実ではなく交流は継続していたと証言しています。

 

まとめ


写真:ガールズチャンネル

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百田尚樹の「殉愛」にはがんで余命いくばくもない、たかじんの最期の日々を献身的に看病した妻としてSの人物像は描かれています。しかし発売当初から内容については関係者から疑義が提起され、ノンフィクションの名に値するのかについて疑問点を指摘する声が少なからずありました。当事者の主張が食い違う中で民事訴訟が提起され、さらに多くの関係者が喧々諤々の主張を展開しました。裁判は記載内容の一部について虚偽を認定していますが、今日でも「殉愛」の真相の全体像については明らかになっているとは言えません。point 242 | 1

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