一時期のホラーブームを経験した世代であれば、人面犬や口さけ女などの都市伝説をはじめとして怪談や怖い話、オカルトなどを楽しみ、ときには恐怖したという方も多いでしょう。ブームの真っ只中で育ったわけではない若い人であっても、一度くらいは耳にしたことがあるはずです。
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そういった数多く存在する怪談の中でも特に馴染みがあるのは、学校の七不思議ではないでしょうか。学校は日本人なら必ずといっていいほど通う場所であり、音楽室や理科室といった誰もが足を運んだことのある場所を題材にした話がリアルに感じられるのは当然のことです。さらに言えば、七不思議のうち最もポピュラーな存在としてトイレの花子さんを挙げることができるでしょう。映画やアニメといったフィクションにおいて取り上げられる機会も多く、圧倒的に有名な怪談だといっても過言ではありません。
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トイレの花子さんはその名の通りトイレに出る女の子のお化けであり、おかっぱの黒髪で赤いスカート姿をイメージする場合がほとんどです。出会う方法としては、校舎の3階にあるトイレで3番目の個室のドアを3回叩くと花子さんが返事をするというものが一般的です。
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この話を聞いて、自分の知っているものと少し違うと感じた方も少なくないでしょう。それもそのはず、トイレの花子さんは有名な存在であるものの、地域によっていくつかのバリエーションがあるのです。例えば特定の時間にしか出現しなかったり、遊んで満足させないと悪いことが起こったりといったパターンの他にも、花子さんのいる個室が異なるケースやそもそもトイレ以外の場所にいるケースなど、細部が違った内容で伝えられていることも珍しくありません。また、あの世に連れて行かれるなど悪さをするタイプもあれば、軽いイタズラで終わるタイプもあります。
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ここで大きな疑問となるのは、トイレの花子さんとは一体何なのかということです。名前や見た目はほぼ固定されているにもかかわらず、日本各地で異なった伝説が語られるのは奇妙な現象に他なりません。また、全国的に有名というのも謎のひとつでしょう。映画などで幾度となく話題にされたことや、インターネットの発達により世界中の情報を手に入れられるようになったことが関係していると考えがちですが、1980年頃には既に噂になっていたといわれているため、年代が合致しないのです。さらに、これだけ普及しているのだからどれかの話は本当で花子さんのモデルになった少女は実在するのではないかと思いきや、その正体についても諸説ありはっきりしません。大抵は学校で命を落とした女の子だと語られますが、やはり地域によっていくつかのパターンが見られます。
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トイレの花子さんが何者なのかを考える上でポイントとなるのは、出現する場所にあります。日本は古くから八百万の神を信仰し、トイレにも神様がいると信じられていました。また、赤い紙青い紙などのように花子さん以外の怪談も多いことから、トイレという場所そのものが子供たちにとって怖いものであり、お化けを想像しやすかったといえます。あるいは今ほど整備されていない時代のトイレは事故にあう可能性があるため、注意を促すためにも怪談話が用いられたとも考えられるでしょう。場合によっては子供たちにトイレ掃除をきちんとさせられるよう大人が利用したこともあるかもしれません。
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ポピュラーなお化けでありながら、トイレの花子さんはまだまだ謎に包まれた存在です。地域はもちろんのこと、学校単位や年代によっても伝説に違いがあることも多いので、出身地の異なる友人たちにも聞いてみれば意外な発見があるでしょう。雑談のネタにはもってこいの話題です。