X
    Categories: ISSUE

京アニ事件、実名報道 批判に見る報道機関のあり方とは?


「実名で犠牲者を報道する必要はない!」 36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件では、犠牲者の実名を報じたマスメディアへの抗議が相次ぎました。その現場を振り返ってみると報道機関のあり方を考える機会にもなった事件と言えます。

point 0 |
産経ニュース

今年7月18日。アニメ製作会社「京都アニメーション」(京アニ)の第1スタジオ(京都市)で、社員36人が死亡、33人が重軽傷を負った放火殺人事件が発生しました。京都府警捜査1課が最初に会見したのは、発生翌日でしたが、この日、被害者名を府警は発表しませんでした。
爆発的な火災により遺体の損傷は激しく、60人以上 の被害者に来客が含まれているかどうかも未確定な段階 。会見の時点で身元の特定作業は難航しており、死者の数も増えていく 。安否情報を含めて災害に準じる取材態勢を各社は敷いていました。point 297 | 1

ADVERTISEMENT
asahi.com

事件発生から1週間、ようやく京都府警はその時点で亡くなった人全員(34人)の身元を特定しました。だが、またも 被害者の氏名は府警から発表されず、先送りされました。

ADVERTISEMENT

「けいおん!」や「涼宮ハルヒの憂鬱」などで知られている製作会社であるだけに 京アニ事件でネットの世論と関心は、被害者を取材するメディアと実名報道に向けられました。府警の実名公表は「先送り」 が続く中、人気アニメ監督らの安否を巡ってSNS上で真偽不明の情報が飛び交うまま2週間が過ぎました。

ADVERTISEMENT

警察発表を待ちきれず、葬儀を終えた遺族らの了承を得て、娘の実名と思い出を語り、花を供えた遺影の撮影を許可した遺族により 犠牲者の実名と故人の生きざまも記事にされました。

point 83 |
朝日新聞デジタル

京アニが 7月22日に「実名が発表、報道された場合、被害者や遺族のプライバシーが侵害される」と匿名報道を要請したことや、8月2日に京都府警が遺族から実名報道 の了承を得られたという10人に限って発表したことで、SNSなどでは実名報道や被害者取材へのメディア批判は一層激しくなっていきました。point 284 | 1

ADVERTISEMENT

「遺族をそっとしてあげてほしい。遺族取材をやめろ」「実名で犠牲者を報道する必要はない。プライバシーの侵害だ」…
ネット上にメディア批判の書き込みがあふれ、電話での抗議も相次いだそうです。

事件発生後から40日後の8月27日。 京都府警は犠牲者全員の氏名を報道機関に伝えた。全国紙や京都新聞は翌日の紙面で、京都府警が「実名報道拒否」だとした人も含めて、実名を掲載しました。

ADVERTISEMENT
point 0 |
sankei.point 57 | com

京都新聞は「尊い命を奪われた一人一人の存在と作品を記録することが、今回のような暴力に立ち向かう力になると考えています。これまでの取材手法による遺族の痛みを真摯(しんし)に受け止めながら、報道に努めます」との「おことわり」を1面掲載しました。
前回からどう説明するか検討を重ね 議論を重ね た結果だという。
それでも 報道各社の実名報道の論理は 社会に響かず、実名報道への批判がさらに沸騰しました。point 252 | 1

ADVERTISEMENT

取材に応じてくれた数少ない遺族も取材への 不満を口にされたそうです。犠牲になった津田幸恵さんの父親は、悲しみにうちひしがれる中、取材で質問を重ねられると「余計なことは止めてくれ、という思いになる」と語りました。

ADVERTISEMENT

京都新聞はお通夜や葬儀の取材を自粛するなど、遺族と信頼関係を築くために過剰な取材をしないことでは一致しても、現実の事件への対処で幾つも論点と課題が生じました。
どう説明し、日々の事件報道の中でどう実践するのか?
遺族取材と実名報道の間には幾つもジレンマがあり、記者たちの意見は時に対立したそうです。

ADVERTISEMENT
ハフポスト

事件発生から40日後に京都府警は、遺族からの「匿名の意向」を付けて犠牲者全員の実名を公表したとはいえ、実名報道に社会の広い理解が得られず、批判されていることに変わりはない現状です。

ADVERTISEMENT

公正な取材をする礎の確保のために警察に情報開示を求めることと、実際に実名報道するかどうかは目的も意味も違うと言えます。
しかし 論点を分けて丁寧に説明する努力が メディア側にも必要になっていることは確かであると思わされます。

ADVERTISEMENT