27日、京都市伏見区桃山町因幡のアニメ製作会社「京都アニメーション」（京アニ）第1スタジオが放火され、社員36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、京都府警捜査本部（伏見署）は 殺人や殺人未遂、現住建造物等放火などの疑いで、青葉真司容疑者（42）を逮捕しました。事件で全身やけどを負って京都市内の病院に入院していましたが、容体が一定程度回復し、入院先の医療機関の情報を元に、府警は「勾留に耐えられる」と判断したことから、逮捕に踏み切りました。
皮膚移植を繰り返すなど重篤な状態を脱し 会話には支障ない
青葉容疑者は「間違いありません」と容疑を認めたという。
平成以降、最悪の犠牲者数を出した放火殺人事件は発生から10カ月を経て容疑者逮捕の局面を迎えました。捜査関係者によると、青葉容疑者の病状は今も重く、自力での歩行や食事はできない状態だが、会話には支障がなくなり、以前よりも発熱の頻度が減っているという。
府警は27日午前7時18分に逮捕状を執行。青葉容疑者は同7時46分、ストレッチャーに寝かされた状態で府警が用意した介護車両に乗せられて、病院を出発しました。
午前8時6分、京都市伏見区の伏見署に到着。大勢の報道陣が待ち構える中、青葉容疑者を乗せた車両は、署の敷地に入りました。青葉容疑者は、ストレッチャーにあおむけに寝かされた状態で、顔にはやけどの痕が残り、短髪にマスク姿でした。point 246 | 1
逮捕容疑は昨年7月18日午前10時半ごろ、京アニ第1スタジオに玄関から侵入し、ガソリンをまいてライターで火を付け、鉄筋コンクリート3階建て延べ約690平方メートル全焼させた上、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、33人に重軽傷を負わせるなどした疑い。負傷者のうち1人は現在も入院中。
府警は 昨年11月、青葉容疑者が当時入院していた大阪府内の病院に捜査員を派遣し、任意の事情聴取を行っています。青葉容疑者は事件当日に身柄を確保された時と同様に、「小説を盗まれたから火を付けた」と動機を説明。「多くの人が働いている第1スタジオを狙った」とも話し、事件3日前にさいたま市の自宅を出て京都に向かう時から事件を起こすつもりだった、との趣旨の供述もしたという。point 239 | 1
青葉容疑者は過去に 京アニに小説作品を応募し、形式審査の一次選考で落選しています。京アニは「（応募された小説は）弊社作品との間に、同一または類似の点はないと確信している」としています。
青葉容疑者は事件当日、京都市内の病院に救急搬送されましたが、命が危険な状態に陥り、2日後に 熱傷の高度治療を受けられる大阪府内の病院に転院。皮膚移植を繰り返すなどして重篤な状態を脱し、昨年11月に京都市の病院に転院し、体を動かすなどのリハビリを続けていました。
京アニ「どのような弁解をしようが、命を奪われた仲間は戻って来ない…」
青葉真司容疑者（42）が 27日朝に 京都府警に逮捕されたのを受け、京都アニメーションは同日、代理人弁護士を通じて
「被疑者に対し、改めて寄せる言葉はありません。行いと結果が全てです。被疑者が自らの行いにどのような弁解をしようが、結果についていかなる反省の弁を述べようが、命を奪われた仲間たちが戻ってくることも、傷つけられた仲間たちの傷が癒やされることもありません」とコメントを寄せました。point 232 | 1
事実を認め「ガソリン使えば多くの人が殺害できると思い…」
午前11時から伏見署で府警捜査本部の会見が行われました。川瀬捜査1課長は、逮捕直後に青葉容疑者が事実を認め、「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思い実行した」という趣旨の話をしたと明らかにし 動機については「今後の捜査で明らかにする」としました。逮捕時や搬送時は「落ち着いており、反抗的な態度はなかった」ということです。
青葉容疑者が事件への反省や謝罪の言葉を述べているかという質問に対しては、「今のところ聞いていない」としました。事件当時の記憶はしっかりしているという。川瀬捜査1課長は、青葉容疑者を送検したと明らかにしました。
犯人が死刑になるだけでは、遺族の心は癒されない…
この報道に対して 新潟青陵大学大学院教授（社会心理学）でスクールカウンセラーの碓井真史氏は以下のコメントを寄せました。
「事件の衝撃は、#PrayForKyoani（京アニのために祈ろう）のハッシュタグと共に、作品を愛する世界の人々にも広がった。
祈りの思いは、今も同じだ。では、私たちは何を祈るべきなのか。容疑者逮捕は良かった。容疑者は最高の医療を受け、逮捕できるまで回復した。まずは、事実の解明を祈りたい。事件当日と事件に至るまでの経緯の解明が待たれる。報道によると、最近の容疑者男性は、「どうせ死刑になる」とリハビリにも消極的と伝えられるが、裁判が継続できる体力の回復を望む。point 227 | 1
公正な裁判とのために祈りたい。被害者のご冥福とご遺族の癒し、今も治療中の負傷者の回復、京アニと作品とファンのためにも祈りたい。私たちの処罰感情は強いだろう。だが、私たちの心が悲しみと怒りの感情に押しつぶされないように、祈ろう。被害者学の研究によれば、犯人が死刑になるだけでは、遺族の心は癒されないのだから」