9日、就職が内定している企業の人事課長からパワーハラスメントを受け、大学4年の男子学生(22)が入社2カ月前にみずから命を絶ったとして、遺族の代理人弁護士らが 記者会見しました。人事課長は、入社時の配属への決定権をちらつかせながら、内定者でつくるSNS交流サイトに毎日書き込むよう強要していたという。会社側も取材に「行き過ぎた行為があった」と認めました。
「無理なら辞退して… 邪魔です」などと内定辞退に言及⁉
会見した川人博弁護士によると、死亡した男子学生は2018年春にパナソニックの完全子会社「パナソニック産機システムズ」(東京)から新卒採用の内定を得ました。同社では内定者への研修の一環として、SNS交流サイトに内定者20人を全員登録させていました。人事課長(当時)は、このサイトに毎日ログインして投稿にコメントすることや、課題として出された本の感想を投稿することなどを求めたという。
「誰がいつサイトに入っているかは人事側で見えています」
「毎日ログインしていなかったり、書き込まない人は去ってもらいます」
川人弁護士によると、18年7月ごろから 人事課長がSNSに投稿するこうした言葉で次第に追い込まれていきました。書き込みが少ないといった理由で 内定者をSNSから排除したり、「無理なら辞退してください、邪魔です」などと内定辞退に言及したりしたほか、「ギアチェンジ研修は血みどろになるくらいに自己開示が強制され、4月は毎晩終電までほぼ全員が話し込む文化がある」などと入社後の過重労働を示唆したりしていたという。
男子学生は2019年1月以降、就職について迷いを口にするようになり、同年2月に自殺したという。
直前には、人事課長からの投稿について「きつい」「つらい」「死にたい」と吐露していたそうです。当時22歳の大学4年生で、同年4月に入社する予定でした。弁護士らは約1年にわたり調査をしてきた結果、人事課長のハラスメント行為で 精神疾患を発病し、自殺につながったとみています。
「放置した会社を一生許せない」再発防止と企業の姿勢の見直しを…
亡くなった男子大学生の遺族は9日、代理人弁護士を通じてコメントを発表しました。亡くなった男子大学生の遺族のコメント(全文)は次の通りです。
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2020年4月9日
父・母
息子は、2018年5月にパナソニック産機システムズ株式会社から内定を得ました。息子は、他の会社からも内定を得ていたのですが、この会社はパナソニックグループの会社だし、研修もしっかりとしているとのことで、「ここなら自分が成長出来るのではないか、ステップアップ出来るかもしれない」と言って、この会社を就職先に決めました。
息子は、2018年7月頃から、内定者交流サイトの活動を始めました。息子は、ログインして、コメントを付けることや、課題とされた図書を読んでの感想も投稿しなければならないなど、常時、サイトへの接続を強いられるようになりました。課題とされた図書も通販で探して購入し、家には大量にあります。旅行に行った際にも、図書とパソコンを持ち込み「楽しめなかった」と言っていました。インターンシップや懇親会などもサイトで参加を呼びかけられて参加し、多忙を極めていました。息子は、常に内定者交流サイトに接続し、毎日、人事課長Aの投稿を読み、そこでの課題をこなすなど、内定者交流サイトを通じた活動が生活の中心を占める様になりました。
更に人事課長Aは、自分は「自分の評価によって、あなたをどの様な配置もできる」「入社後はもっと厳しい状況が待っている」とこの様な言葉を使って息子を追い込んでいきました。息子は、「人事が威圧的」「圧力が凄(すご)い」と漏らす様に言っていました。息子は、内定者交流サイトでの活動に疲弊し、人事担当者からの心理的な拘束と圧迫に耐えかね、そして就職先の会社に絶望して、自死してしまいました。
息子が就職先にこの会社を選ぶことがなければこんなに早く旅立ってしまうことはなかった、あの日に戻れるなら戻りたいと思うと、毎日涙が溢れ、悔やんでも悔やみきれません。
これからの楽しい未来も奪われ、大学から社会に巣立つ間近で、この様な事になってしまい、追い詰めた人事課長Aや、それを放置していた会社を、一生許す事が出来ません。
会社に対しては、私達にとってはたった一人のかけがえのない自慢の息子が亡くなってしまった事の重大さをしっかり受け止め、この様な事が二度と起こらない様に根本的に会社運営を見直して欲しいと思います。
パナソニック株式会社に対しては、パナソニックという看板を信頼して息子は入社したのに、パナソニックグループであるからこそ安心して息子を任せたのに、このようなことが行われていたと思うと、パナソニックのロゴを見るだけでも怒りが湧き、裏切られた気持ちです。以上
意欲と希望を喪失させ続けた責任は大き過ぎる…
今回のこの報道にも多くのコメントが寄せられていますが…
《 人事権限という強い力を持つものと、内定社という社員ですらない若者たちが閉じられた世界のなかで、意欲と希望を喪失させ続けた責任は大き過ぎる。担当者個人のものだけで成立するとは思えず、企業として日常的にどのような状況になっているのかを明らかにすべき。
いま社会全体が先行きのわからない大きな不安のなかで生活をしている。特にこれから「働く」ということの不安定性は、生活に直結し得る重大なテーマになる。
意中の企業に内定をもらっても、正式に採用が決まるまで安心もできず、そこに対して準備や研修、それが任意という立て付けであっても、雇用される側の置かれた立場は非常に弱いものである。
これまで就職先の企業で起こったトラブルを相談してくれ、第三者として改善や退職の支援もしてきたけれど、「働く」に限らず、常に相談できる第三者の存在を持っておくことは生存戦略であることを肝に銘じて若者とかかわっていく…》
認定特定非営利活動法人育て上げネット理事長である 工藤啓氏はこのようにコメントしています。
その他にも 《 邪魔だと言うくらいなら最初から内定を出さなければいいのに…》 《 まだ社員でも無い人に無給で命令する事自体違法では?》《 こういう記事を読むとパナソニック製品は買いたくなくなる》等など、あまりのパワハラに批判殺到のコメントが多く寄せられているようでした。