2019年5月15日、65歳の男性が車を誤操作し公園のフェンスを乗り越えて、砂場で遊んでいた保育園児らに突っ込むという衝撃の事件がありました。昨今、高齢ドライバーによる暴走事故が相次ぐ中、テレビ東京『家、ついて行ってイイですか？ 【今夜は特別編】予想外の結末…最後に衝撃告白SP』で放送された内容が「涙しか出ない、辛すぎる」と視聴者の間で話題となっています。

ほろ酔いの男性、玄関にかけてあった”スーツ”の意味

同番組は、終電の発車時刻以降に、街頭で「タクシー代を出すので家について行ってイイですか?」と番組制作者が一般人に声をかけ、同意を得られた人の帰宅路に同行し、住居を訪問してインタビューするという企画。

今回、話題を呼んでいるのは、ロケ隊が大宮駅で声をかけた47歳の男性です。職業は板前ということですが、”ある事情”で店は閉めてしまったと話します。少しお酒がはいっていることもあって、ルー大柴ばりのオヤジギャグを連発しながら気さくな様子で取材に応じ、自宅への同行も快諾。

しかし、ロケ隊が男性の家の玄関先にかけてあったスーツに気がつき、それについて尋ねると、男性の表情が一変します。すると、「きょう着たの。娘の裁判」と、男性は仏壇を指さしました。

実は3年前、男性は当時高校1年生だった長女（享年15）を交通事故で亡くしていると話します。

その日はたまたま学校が休みで、RADWIMPSのライブに行く途中でした。娘さんが横断歩道を渡り終え、駅に向かって歩いていたら後ろから車が突っ込んできたそうです。その車を運転していたのは80歳の男性だったそうです。

亡くなった娘さんの父親によると、「(運転手は)そのまま壁に向かってうちの娘を押し当てて、5分も6分も10分もりてこない。本人は。周りの人間がダーンと窓叩いて、それでも降りてこない。『何やってんだ！　お前、早く降りろ！　バックしろ！』。それでもアクセル踏み潰してた」と事故当時の様子を明かしました。point 210 | 1

さらに、周辺に建っているマンションの3～4階まで、娘さんの「ギャー！」と叫ぶ声が響き渡っていたといいます。その後、救急車で病院に運ばれましたが、その時点で心肺停止。開胸して心臓マッサージも行われたものの、帰らぬ人となってしまいました。

この事故による刑事裁判の判決は禁錮1年6カ月と言い渡され、民事裁判の判決は今秋頃に出る予定とのことです。しかし、実はこの日の裁判で、加害者がすでに死亡していたことが明かされたそうです。

大切な我が子どころか、怒りをぶつける相手すら奪われてしまった男性は番組スタッフに胸の内を明かしました。

「ただ、その加害者、きょう裁判所行ったら、2月7日に死にましたっつうね。ふざけんなって話だよな。オレ、どこに誰に、何を言えばいいの？ それで判決出た、出ない？ 冗談じゃないよね。お金払う、払わない。そういう問題じゃないよ。納得なんていくわけないのに、納得いかされちゃうんだから、判決として」

と男性は悔しさをにじませ、「何もしてあげられなかった。抱きしめたいよ……。抱きしめたいよ……。抱きしめたいですよ……」と遺影を見つめながら涙しました。

事故が多発していても高齢者が免許を返納しないワケ

このなんとも痛ましい事故について、番組放送後のネット上では、加害者への怒りの声と、男性に同情する声で溢れていました。

“泣きすぎた。苦しい。こんなことあってはいけない”
“ニュースで見ても胸が締め付けられる気持ちがしたけど、お父さんの口から聞くと本当に辛い”
“あんなにはっきりした描写状況が聞ける機会、ニュースはないし、全国の運転するご老人は見た方がいいと思う”
“やっぱり高齢者には免許返納を義務付けるべき”point 260 | 1

今回の事故が引き起こされる原因について、社会部記者はこう語ります。

「昨今多発する高齢者ドライバーの暴走事故を受け、免許の返納を義務付けるべきだという議論が盛んになっていますが、現行の免許返納は自己判断に委ねられる部分が多く、警視庁の発表によると、2008年の75歳以上の返納率は5.point 141 |

18％にとどまっています。また、『自分の運転テクニックなら十分危険回避できる』と考える割合は、65～69歳で29％、70～74歳で46％、75歳以上で53％と、年齢が高いほど高くなる傾向があります（国民生活センター『国民生活』2016年11月より）こういった背景もあり、家族が返納を勧めても、なかなか受け入れられない現状がある。また、法整備だけでなく、車に代わる安全な移動手段の確保が早急に求められています。」point 205 | 1

事件後、亡くなった娘さんの友人たちが、”高齢者の免許更新制度の改正”や、”返納後の交通手段確保”などを求め、ネット上で署名活動を開始したと言います。そして、現在までに賛同者は2万5,000人を超えています。

また、被害者の母親もたびたびメディアに登場し、高齢ドライバーの問題提起を行っています。このような悲劇を二度と繰り返さないよう、ドライバーたちには今一度、運転について考えてもらいたいですね。