芸歴4年目の若手芸人、小保内太紀(おぼない・たいき)さんが6月15日にTwitterに投稿した文章について、ユーザーの間で様々な議論が飛び交っています。小保内さんは男女で「カフカと知恵」というコンビを組んでいます。コンビ結成から3ヶ月あまりだというのですが、早くも芸人の間である問題に直面したそうです。
今春から知恵の輪かごめさんと「カフカと知恵の輪」というコンビを組んでいる小保内さんは、芸歴4年目の期待の若手芸人です。
そんな小保内さんが「ある日起こったこと」というタイトルでツイートした内容がこちらです。
ある日起こったこと pic.twitter.com/V8NA3yJfTD
— t.obonai カフカと知恵の輪 (@twobonai) June 15, 2019
その文章の内容は、複数の芸人が登場する舞台にコンビで出た際、相方のかごめさんに対して男性芸人から「エロい」という“イジリ”が続いたそうです。これに対して小保内さんは、「セクシャルなふりをした訳でもないのに、こうした“イジリ”が続くことはハラスメントだ」という憤りを感じ、イジリ続ける芸人仲間に怒ったそうなのですが、「人によって色んな価値観がある」「NGなら最初に言っておくべき」などの反論が出たといった内容でした。
この件に関し、小保内さんは「色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならない」という主張とともにこの文章をツイートすると、瞬く間に拡散され、小保内さんの考えに否定的な意見から、共感する声など様々な意見が寄せられています。
そこで、今回のことで何を感じたのか小保内さんに記者が直撃しました。相方が女性だったために始まった“エロいイジリ”について、小保内さんは、きっかけは他の芸人から「(小保内さんの相方が京大出身なため)頭いいと思ったらエロく見えてきた」というような発言があったことだったと振り返りました。さらに、男女コンビを始めてから気づいたことがあるそうです。
「芸人って『~~に詳しい』『神経質』とかキャラクター化されることも多い。それは分かりやすいし、面白いと思っています。でも、今回はなぜ、相方の個性の部分じゃなくて、『女』としてくくられたのか」
「女性が舞台に上がると『女芸人』とくくられてしまうんですよ。お笑いにおいて女性が少ないという男女比率的なこともあって、『女である』がキャラのように扱われてしまうと感じていました」
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お笑いの世界では女性がキャラになってしまうと指摘する小保内さんは、価値観を強要してはいけないと話します。
yahoo.
co. jp「『人によって色んな価値観がある』『エロいじりがNGなら最初に言っておくべき』など(共演した芸人から)反論されましたが全部大きな間違いです。色んな価値観があるからこそ他者を尊重せねばならないし、エロいじりをするなら事前に許可を取れ、が正解です」(小保内さんのツイートから)
ADVERTISEMENT 「この時に言われた『色んな価値観がある』というのが、『俺と同じ価値観になれ』という意味だと感じたんですよね」
「様々な価値観がある時に、他の価値観の存在を受け止めた上で、互いの自由のスペースを調整していくことが大事だと思います。なので、そこで『相互承認』につながらない『他者の尊厳を傷つける自由』は存在できないはずなんです。例えば、『人を殴りたい』という自由が『殴られない私をくれ』という自由に優先することはないんじゃないでしょうか」
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小保内さんのツイートに対して、その時の芸人の技術の問題なのではという指摘の声も寄せられていました。しかし、小保内さんは“イジる題材”も技術の一つだと反論しています。
「ウケる角度を探す視点も技術じゃないですか。安直な下ネタを続けるとお客さんは引いてしまうので、そもそも『エロいじり』を続けるというのはお笑いの技術として違うと思ったんです」
ADVERTISEMENT 「笑いを取ろうと思って、何かに踏み込んでいくことは絶対必要なことだと思うんですよね。色んな方法や話題を試してみて、ミスったと思ったら下がることが大切だと思っています。僕も過去にやり過ぎてしまったことはあるので…撤退する勇気みたいなものも大切だと感じました」
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Twitter上では様々な意見が寄せられていますが、ネット上でも小保内さんの発言は話題となってます。
「この人の言うことはまぁそうだろうなとは思うんだけど、前にいとうあさこさんが「生物学的に見ると、女芸人は異例中の異例らしい」
と話していたのを思い出しました。男性側もどういじっていいのか戸惑うのは当然…なのかも知れないと思います。女性の人権を守ろうと思うなら、女性芸人自体をやめた方が、生物学的には自然だったりするのかもしれません。男女平等って難しいですね。」
日本のお笑いのスタイルがそもそも女性にとって不利な環境だとする見方もあるようです、他にも、小保内さんの「女性がキャラになる」という意見に厳しい指摘も見受けられました。
「嫌なら嫌だとはっきり言っていいと思うし、それでもその嫌なことをネタにされるのであれば、本気でキレて裁判沙汰にでもしていいと思う。
ただ、自分でネタにしてるのであれば、他人にいじられたときに「おいしい」と思わなきゃおかしいし、そういうことがなくても笑いを取れる実力を備えてなければ説得力は弱いかもしれない。」
「女であることをキャラとされるのが嫌とは言うが、じゃあ自分は男に対してそういうことをしてないのか、よく考えた方がいい。
ブスいじりは女に対してはダメで、男に対してはOKなどという意識なのであれば、それは立派な男女差別だし、男をキャラにしてるということだから。」
小保内さん本人も、予期していない盛り上がりに戸惑いを隠せないようですが、それほどお笑いの世界というのは人々の関心の中にあるようです。男女差別は世界的にも取り沙汰されているほど大きな問題ですが、価値観として区切ってしまうには無理があるのかもしれません。