ガキ使・黒塗り事件
大晦日の恒例となっている「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで笑ってはいけないシリーズ」。
今年は「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで大晦日年越しスペシャル!! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時(日本テレビ系)」と題して放送されました。
しかし、この番組が世界中で物議を醸しだしているのです。
問題となっているのは、番組の中で、ダウンタウンの浜田雅功が映画「ビバリーヒルズ・コップ」で刑事役を演じたエディ・マーフィのコスプレをした際、顔が黒く塗られていたことです。
年明けからインターネット上などで、顔の黒塗りが差別に当たるのではと意見が飛び出したのです。
海外でも話題に
この問題は海外でも報道されており、アメリカのニューヨーク・タイムズは電子版で「日本のお笑い芸人がブラックフェイスを使って炎上」などといった記事を掲載しています。
イギリスの公共放送BBCも「ブラックフェイスの役者が出演したテレビ番組が怒りを買う」といったタイトルでこの件について触れています。
さらに「けやきヒルズ」(AbemaTV)では、外国人を対象にお笑い芸人が顔を黒く塗って黒人俳優のコスプレをしたことについてインタビューを行っています。
「顔、容姿、特に皮膚の色で表現しようとするなんて、すごく繊細な問題だからやるべきではない」(白人男性・高校生)
「差別というかわからないが、傷つける可能性があるのは確か」(黒人女性・日本文化を研究する学生)
「お笑い番組での放送だから、失礼でもなかったし全く気にならなかった。番組は見たけど嫌な気はしなかった。番組全体が馬鹿げたおふざけな感じだったから、人種差別だとは思わなかった」(黒人男性・「ガキ使」を視聴)
「アメリカでは1950年代にブラックフェイスをしていた歴史がある。アフリカ系アメリカ人を馬鹿にするために新聞に載っていた。それをまたやることは無礼だと思う」(黒人女性・高校生)
「(Q.今でも人種差別はありますか?)ある。そして無知が多い。この問題に向かわなくてはいけない。重要なのは対話。逃げることはできないから」(黒人女性・アメリカ在住)
といった意見が出ていました。
日本テレビ側の主張
物議中にあるにもかかわらず、日本テレビは、今月6日に「笑ってはいけない」完全版スペシャルでも問題のシーンをカットすることなく放映しました。
「浜田がエディ・マーフィ演じる刑事にふん装中」という字幕テロップも出しました。
「けやきヒルズ」がこの件に関して、日本テレビに問い合わせをしたところ、
「ご指摘のシーンについては、ダウンタウンの浜田さんが、あくまで、映画『ビバリーヒルズ・コップ』で俳優のエディ・マーフィさんが演じる主人公『アクセル・フォーリー』に扮したもので、差別する意図は一切ありません。本件をめぐっては、様々なご意見があることは承知しており、今後の番組作りの参考にさせていただきます」との回答が返ってきたそうです。
制作側には差別の意図がなかったにも関わらず、なぜここまで物議になっているのか。
ハフポスト日本版編集長の意見
この黒塗り問題をメディアで初めて報じた竹下隆一郎氏は以下のように語っています。
「日本テレビ側に差別の意図はなかったと思う。ただ無自覚の差別こそ問題。お笑いというのはタブーに切り込んだり普段言えないことを言ったりして楽しむ文化や、ものまねでちょっと小バカにして楽しんだりする。ただ、黒人の方が差別されてきた歴史を考えると、お笑いでやるには重過ぎるテーマ。黒人への差別問題というのは敏感なもの。今回、エディ・マーフィをものまねしている意図はわかるが、黒く塗ったことによって『肌が黒い人をまねた』と範囲が広がってしまった。つまり『黒人の肌の色を笑った』と捉えてしまう人がいた。それがたとえものまねのつもりだったとしてもそう思われた時点でもう許される問題ではない。」
さらに竹下氏は、「日本だと例えば原爆に触れるのと同じこと。もし被ばく者のものまねがあったとして、お笑い番組だから許してくださいと言われてもさすがに日本人も怒ると思う。」とも付け加えました。
今は海外の人が日本のテレビを見れる環境にあります。
ネット文化が発達し、時代がそのようになっている今、影響を与える人や、取り扱う題材の歴史などを知り、番組作りをする必要があるのです。