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自意識過剰では片付けられない…外見の違い「見るのは仕方ない」って思いますか?


顔の変形やあざ、まひ、傷の痕。人とは違う外見の人たちが学校でいじめられ、就職や結婚で差別にあう「見た目問題」は未だに無くなりません。中には、ジロジロ見られたり、逆に無視されたりする人たちがいます。当事者の親として取材を続けてきたある記者が、他者から向けられる視線について考えたいと、顔にあざの特殊メイクをして、街に出ました。

体験

自身の長男が生まれつき右顔の筋肉がなく、笑うと顔がゆがみます。見た目問題に強い関心を持ち、これまで20人ほどの当事者にインタビューをしてきた記者。あるとき、顔にあざのある男性が私にこう語りました。「『見た目の悩みなんてたいしたことではない。大切なのは、顔よりも心だ』という言う人がいます。ならば、顔に赤いペンキを塗って外を歩けますか」この問いかけが、記者の心にずっと引っかかっていました。当事者の痛みを頭では理解していても体感していない記者に、投げかけられていると感じたためです。point 242 | 1

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ウィズニュース

以前、NPO法人マイフェイス・マイスタイル協力のもと、記者のあざメイクは始まりました。手際よく、記者の顔にメイクしていきます。少しずつ、少しずつ、1時間半かけ、顔に赤あざが描かれていきました。色だけでなく、肌の隆起までリアルに表現していきました。マイフェイス・マイスタイルの代表が「ぱっと見では、メイクとはわからない精巧さです」と感心するほどでした。メイク中、同席していた同僚が「見ているだけで緊張してくる。私がメイクをされたら、ジロジロ見られるのが怖くて外に出られないかも」と話しました。しかし記者はというと、メイク中も終了後も心に動きはありませんでした。すごい技術だなぁと思った程度です。事務所にいるのは知り合いばかりでまだまだ冷静でした。point 379 | 1

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ウィズニュース

あざの顔で外へ

しかし、外に一歩足を踏み出すと、気持ちが揺れ動きました。「人に好奇な目で見られるんじゃないか」という不安です。少し離れた場所にいたガードマンが記者のほうを向きました。それだけで「ひょっとして、あざが気になったのか」とモヤモヤした気持ちになりました。「赤あざ」のある記者は、電車に乗り込みました。当事者の多くから「電車の中が特に見られる」と聞いていただけに、緊張しました。でも、ほとんどの人が下を向いていることに気づきました。手元のスマートフォンを見ているためです。ある当事者が、「スマホのおかげで、生きやすくなりました」と、とつとつと語っていたことを思い出しました。point 347 | 1

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マイナビ学生の窓口

目の前の席に座る中年の男性が、ふとスマホから目を上げて私の顔を見ました。目が合うと、さっとスマホに顔を戻しました。直後に3、4歳の子でしょうか。私の顔が気になるのか、何度もこちらに視線を向けました。

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駅に降りて、人混みを歩きます。目的地は公園です。「反応が素直な子どもが苦手」という当事者が多いためです。公園へ向かう数百メートル、すれ違う人の大半が記者の顔には気づいていないようでした。歩くとき、他人の顔には、さほど注意はいかないものなのかもしれません。ただ、記者の顔に気づいた人たちの中には、数秒間、目で追いかける人もいました。視線がまとわりつくような感覚に、当事者が「見られていることを肌で感じる」と言っていた意味が、少しわかりました。point 220 | 1

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ウィズニュース

公園に到着。子どもと一緒に来た親たちに交ざって、遊具のそばに20分ほど立っていました。遊具で遊んでいる小学校低学年の女の子と目が合いました。私の顔をまじまじと見ながら、遊具を上っていきます。そして、隣にいた友達の肩をたたき、私に向け指をさしました。女の子は手のひらで自分のほおを2回たたきました。声は聞こえませんでしたが、そのしぐさに記者は眉をひそめてしまいました。女の子が「ねぇねぇ見て。あそこに、顔が赤い人がいるよ」と友達に伝えたのだろうと感じ、いい気持ちがしませんでした。point 296 | 1

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あざのある人が子どもを連れて公園に遊びに来たら、こうした反応を受けるのは日常茶飯事なのでしょう。子どもが見慣れぬものに好奇心を持つのは仕方ないかもしれませんが、好奇を向けられる当事者はストレスを感じるだろうと思います。

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他人の反応

記者は1時間で10人ほどに声をかけましたが、大半の人が「じっと見つめない、でも無視もしない」という対処をとってくれました。丁寧に道を教えてくれたといいます。

2人組の男性に、「私の顔を見て、どう思いましたか?」と尋ねました。男性の一人は「大きなやけどの痕かと思ってびっくりしました。言ってしまえば、普通じゃないので。だから、紫っぽい顔が見えて、思わず視線がいってしまいました。ただ、見ちゃダメって思いもあったので、見ないふりをして見ました」と話し、もう一人の男性も「特徴があるので、目が自然といきました。声をかけられて、ご本人も気にしているところだと思うので、失礼のないように対応しようと思いました」と話しました。point 311 | 1

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声をかけた中には、記者の顔を見て、逃げるように去っていった若い女性2人組もいました。もちろん、知らない男性に声をかけられてびっくりしただけで、あざは関係なかったかもしれません。ただ、記者の中では「冷たい対応をされたのは、ひょっとしたらあざが原因では?」との思いがよぎりました。他人に道を尋ねて断られた経験がなかっただけに、少しショックだったのです。

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電車の中では、いったん視線をそらして、また見る男性がいたので声をかけると、「見ていませんよ。自意識過剰でしょう」と叱られました。この男性の言う通り、勘違いだったかもしれません。ただ、ある当事者の人が言っていた「他者の視線に非常に敏感になってしまう」との言葉が腹に落ちました。

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ameblo.jp

「仕方ない」の違い

人の視線に敏感になっている当事者がいます。では、街で外見に症状がある人たちと出会ったとき、私たちはどう対応をすればいいのでしょうか。「驚いて見てしまうのは仕方ない」「美人やイケメンを見たら、思わず見るのと同じだ」と考える人もいるかもしれせん。

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もし、はじめて当事者に会ったら、思わず見てしまうと思います。そのことを「仕方がない」ととらえる当事者もいます。でも、見る側が「仕方ない」と開き直るのは違います。そうした人と街ですれ違い、驚いて思わず見てしまったら、当事者の多くが視線を感じ取っていることを思い出して下さい。そして、頭の片隅でいいので、世の中にはいろんな外見の人がいるんだと覚えておきましょう。そうすれば、次に会ったとき、自然な振る舞いができるようになるはずです。point 214 | 1

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