近年、若い女性の間でも発症率が高くなっているという乳がん。乳がんのステージによっては、乳房を全切除しなけれなならないなど、外見の変化に悩む女性も多いです。そんな乳がん経験者のために、長野県で経営している、乳がん経験者を徹底配慮した旅館が話題になっているようです。

宿泊客が乳がん経験者限定の旅館？

長野県山ノ内町にある老舗旅館「信州 渋温泉 湯本旅館」では、約8年前から 毎月第3金曜日を特別営業日にしています。それは、宿泊者を乳がん経験者とその家族、パートナーに限定しているのです。手術の跡や、治療の副作用による外見の変化に悩む乳がん患者に、気兼ねなく温泉に入ってもらう取り組みです。point 219 | 1

乳がん経験者に対する配慮を徹底

女将の湯本英里さんは、副作用で汗が出た場合にタオルを2枚用意しておくなど、再発を予防するためのホルモン治療を続ける患者への配慮も欠かしません。実は湯本さん自身も乳がん経験者です。約11年前に腫瘍が見つかった時にはすでに末期の状態でした。湯本さんにはお子さんが3人いますが、一番上の子どもに「別に胸なくても、お母さん生きていればいいじゃん」と言われたことを思い出すたびに、今も涙することがあるそうです。point 270 | 1

湯本さんは乳がんと診断された翌年に右胸とリンパを切除。つらいリハビリに苦しむ湯本さんを支えたのが温泉でした。手術で不自由になっていた腕も動かしやすくなったと言います。乳がん患者の中では、温泉に入りたくてもためらっている人も多いということで、温泉に入れるきっかけを作るために「ピンクリボンプラン」を設けたといいます。point 211 | 1

温泉に通い詰める利用客も

そうした女将の湯本さんの人柄に惹かれ、温泉に通うようになった人もいるようです。とある利用客は「生涯温泉に入らないだろうなと思っていたけど、『悪いことしたわけじゃないのに、何でこんなにこそこそしているの』と思いました」「適度に放置してくれるんですよ。本当に精神的に追い詰められている時は、あんまり根掘り葉掘り聞かれても困る。逃げ場が見つかってよかったと思います」と、湯本さんの存在に励まされているといいます。point 269 | 1

これからも取り組みは続けていくという

取り組みを始めて8年経った現在、湯本さんは営業的には全く成り立たないものの「何でもやめてしまえばそこで終わっちゃう。私が当事者なので、やめずにこれからもずっと続けます」と話しています。ちなみに、こちらの旅館では、定められた日以外でも、乳がん経験者が温泉を優先的に貸し切り利用できる配慮も行っているということです。point 234 | 1

[著作権者VONVON /無断コピー、無断転載および再配布禁止（違反時の法的措置）]