広島の菊池涼介(31)が2日、横浜スタジアムでの横浜DeNA戦でエラーを記録され、二塁手としての連続守備機会無失策記録が「569」でストップとなった。8回二死一、二塁で桑原将志(27)が打ったセカンドベース寄りの高いバウンドを弾いたものだったのだが「エラーの判定は厳しいのでは?」との疑念の声が続出している。昨年8月には、菊池の失策が翌日にヒットに訂正されるレアなケースもあったのだが、どうなるのか…?
人数制限がかかる中、場内のカープファンが唖然とした。8回二死一、二塁。(横浜)桑原が叩きつけた打球が、ジャンプした塹江敦哉のグラブを越えて大きくバウンド。菊池は猛チャージ。ほぼセカンドベースの横あたりで、ジャンピングスローを試みようとダッシュしグラブを差し出したが、打球はグラブの土手に当たり前にこぼれた。その時俊足の桑原は一塁ベースの手前まで迫っていて、もし捕球できてパーフェクトな送球だったとしても一塁でアウトにできたかは微妙な球であった。場内のカープファンは息をのんだが、公式記録員はエラーと判定しスコアボードへは「E」マークが光った。
これは、菊池にとってただのエラーにならなかった。2019年9月16日のヤクルト戦以来、2シーズン約1年半ぶりのエラー。昨季は、503度の守備機会を無失策に収め、二塁手として史上初の「守備率10割」の偉業を達成していた。結果として、満塁のピンチを切り抜け無失点に抑えたこともあり、菊池はベンチに帰って笑顔ではあったが、とてもショックな判定だったと思われる。ヤフーでは「無失策記録ストップ」が取り上げられた。「エラーがニュースになる男」としては、それだけでもプロといえるが、納得のいかない広島サイド。複数のスポーツメディア報道いわく、試合後、佐々岡監督は「捕っていても捕っていなくても、1番打者なら厳しい。ちょっときつい判定」と不満をあらわにした。ネット上では「人間だからミスはある」「これでプレッシャーから解放される」などの激励と共に「あれは内野安打では」「菊池だからこその名誉エラー」「無理に突っ込んでいなければただのヒット」など、判定に疑問視する意見も多くみられた。
エラーか、ヒットかの判断は、公式記録員の判断に委ねられているが、一部に本格的な野球経験者がいないこともあり、以前より「プロで野球をやったこともない人間に判定はできないだろう」との不満の声もあがっていた。日ハムでの現役時代にショートでダイヤモンドグラブ賞を一度受賞。広島、ロッテ、中日、日ハム、オリックス、阪神で内野守備走塁コーチなどを歴任し、「侍ジャパン」でも、2度、内野守備走塁コーチを務めた”守りのスペシャリスト”でもある評論家の高代延博氏は 「ヒットか、エラーか、公式記録員が判断に迷うプレーは年に何度かあるが、今回は100%ヒットと判断すべきプレー。映像で何度も確認したが、桑原の足と実際のタイミングを検証するとたとえ打球を弾かずに捕球して、完全なプレーをやり遂げたとしてもセーフになっていた可能性が高い。名手の菊池ゆえ厳しく見たのかもしれないが、菊池は、連続無失策記録を続けている人物。普通の二塁手であれば、ああいうチャレンジなダッシュはしない。待って打球を処理しているところ。打球を弾いたからと言って、それをエラーにするのは、あまりに残酷だ。プロ野球を潰し、プロ野球ファンを失うような判断。菊池だけではなくヒットを失策にされた桑原も含めて誰も喜ばない。プロのプレーは、公式記録員というプロが根拠をもってプロらしく判断してもらいたい」と述べた。
昨年8月11日の中日戦で、(中日)京田陽太が放った二塁へのライナー打球を菊池が取り損ね失策と記録されたのだが、実は中日側が「空中で打球が不規則に変化していた。京田のヒットではないか」と文書で異議を申し立て、セ・リーグは、映像を検証した結果、空中で打球がレギュラーしていたことを認め、翌日「失策」を「ヒット」に訂正する異例の措置が取られた。今回も広島側ではなく、ヒット性打球を失策と記録された横浜DeNA側が異議を申し立てる必要があるのか、一部で疑念のある失策記録が訂正される可能性もある。たとえ記録が訂正されないにしろ、「エラーがニュースになる男」は、連続無失策記録にゼロから再挑戦するだろう。