6月といえばジューンブライドですよね。ヨーロッパで「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」と古くから言い伝えられてきたことが世界に広まり、日本でもこの梅雨の時期に結婚式を挙げたカップルも多いのではないでしょうか。しかし、結婚式といえば一番ネックなのが招待客への引き出物です。そんな新郎新婦も頭を悩ませる引き出物に、圧倒的なアイディアで招待客を賑わせたカップルのツイートが話題となっています。
引き出物といえば、喜んでもらえて、さらに記念になるようなものが良いですよね。そうすると、趣向を凝らすのにも難しくありませんか??引き出物として代表的なのは、夫婦のイニシャルが入った食器などではないでしょうか。また、最近では新郎新婦のお財布事情に合わせたカタログなども主流になってきているようです。しかし、ネット上では「2人の名前が入った食器はちょっと使い道に困る」や「カタログは便利だけど無難すぎてもっと記念いなるものないかな」などの意見も見られます。
勤務先とか関係なく、マジのマジでフルスペックのゴリゴリ自腹引き出物プラモです。本当に今日まで黙ってるのしんどかった。 pic.twitter.com/QFZ08wApmp
— からぱた (@kalapattar) June 16, 2019
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そんな中、前代未聞の「新郎新婦のプラモデル」が引き出物として配られた、結婚式がTwitterで話題となっています。「勤務先とか関係なく、マジのマジでフルスペックのゴリゴリ自腹引き出物プラモです。本当に今日まで黙ってるのしんどかった。」というコメントともに、投稿された写真。そこには、新郎新婦と思われる2体と、おめでたい「寿」の文字、そしてなぜかビールジョッキから成るプラモデルが写っています。
この写真の投稿者は、未組立プラモ写真家にして模型専門誌の副編集長だった「 からぱた(@kalapattar)」さんで、「多分だけどマジで私用で金型彫ってプラモになった夫婦は人類初だと思う」ともコメントしています。現在は模型ブログ「超音速備忘録」を営んでいるとのことで、自腹を切って金型を作り、自身と妻を20分の1スケールで模型化したとのことです。
この衝撃的な引き出物に、多くの祝辞とともに、「モデラーの鑑だ」「金型がハン・ソロみたい」といったからぱたさんの技術に感動するコメントが寄せられています。他にも「常識が負けた…スゲーよ…」「確かに一生物になるし結婚の記念にはピッタリなのか???」「それを許してくれる奥さんが素晴らしい」驚きの声が上がっていました。この引き出物について、実際の招待客はどのような反応だったのか、そして妻は反対しなかったのか、からぱたさんに記者がインタビューしました。
結婚式、自腹で金型起こして嫁とプラモになりました。今日来た人だけの超プレミアなので、みなさま大事にしてねー。 #ぱた婚 pic.twitter.com/n9Lii6hQn6
— からぱた (@kalapattar) June 16, 2019
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記者:ギフトのアイデアが思い浮かんだきっかけは?
からぱた:プラモが好きで、プラモに関わる仕事にいろいろな形で14年ほど関わっています。その中で、「いつか自分だけの金型を持ちたい」、「『何かを再現するためのもの』という模型の役割や、商売的なアイデアを超越したプラモ(のようなもの)を作りたい」という夢がありました。人生いくつかの節目がありますが、“結婚式”というタイミングは周囲の協力も得やすいし、自分がそれなりの額を投じるのにも納得感があると感じました。
記者:ビールを彫った理由は?
からぱた:新郎新婦がもっとも好きなものと一緒にひとつの金属の塊になる!ということです。
記者:制作で一番手こずったことは?
からぱた:百戦錬磨の金型屋さんに「組めないものを作る」ということを理解してもらうことです。
記者:当時から「組み立てることができないプラモ」の構想もあった?からぱた:ランナー(プラモの枠)を見ると、ほとんどの人間は「これは組めるものに違いない」と考えるはずです。しかし、今回のギフトはランナーからパーツを切り離した瞬間に意味がバラバラになってしまい、二度ともとに戻せないという作品になっています。
プラモの持つ、「完成と破壊が表裏一体になっている」という性質から”完成”を取り除くと、最初から完成している!というのがテーマです。ハナから「組めるもの」を作る気はありませんでした。…伝わりますでしょうか?
記者:今回のケースはどのくらいの費用がかかる?
からぱた:これはすごく難しいです(ご祝儀価格でやってくれると申し出てくれた業者さんに感謝しております)。まあまあいい感じの海外旅行1回分、としといてください。
記者:奥様の感想は?
からぱた:「金型起こしたいんだけど…」とおうかがいを立てたところ、「面白いじゃん、やりなよ」と即答でした。仲間とシェアできる思い出がモノとして残ったことには納得してくれているみたいです。
記者:知人友人の反応も聞かせて?
からぱた:友人も親戚も会社同僚も受付に置いた金型を見て「本当にやったのか!」と驚き呆れていましたが、私の普段の仕事や趣味に理解のある方々に恵まれ、帰りにプラモを渡したときは皆さん笑顔で受け取ってくれました。
式当日、会場では受け付けに金型を置き、閉宴時に参列者にプラモを渡したそうです。みなさん笑顔で受け取りつつ、ランナーから切り離すだけで完結してしまう構造に「組めないじゃん!」とツッコんでいたんだとか。さらに、盛り上がりはそれだけに止まらず、そこから「そもそも『組めないプラモ』とは」「プラモの定義とは何だろう」といった問題が提起されたそうで、「みなさんが半分困惑しているのが痛快でした」と、からぱたさんは嬉しそうに語っていました。ノリのいい奥様とともに結婚式で自分の夢を叶えたからぱたさん。招待客にとっても新郎新婦にとっても素敵な思い出となったのではないでしょうか。