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あの騒動後、スタップ細胞にまつわるニュースはある?


スタップ細胞、覚えていますか?内容はよくわからないけれど、一時期大ニュースになっていたから名前は知っているという人も多いでしょう。スタップ細胞の正式な名前は刺激惹起性多能性獲得細胞といい、動物の細胞に酸などを使って刺激を与えるだけで作ることができる、どんな器官にも分化可能な万能細胞のことです。
これまでの生物学を覆すような大発見だったこと、更に発見者が若い女性研究者だったということもあって大変なニュースになりましたが、論文に疑義があるとしてこの発見は否定されてしまいました。

写真:zh.wikipedia.org

◼︎結局スタップ細胞はないの?

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写真:twitter.com

多能性幹細胞として広く知られているips細胞は、細胞に4つの遺伝子を導入することによって細胞の分化能力を引き出すものです。一方小保方氏の主張したスタップ細胞は、外部からの刺激のみで万能性を獲得させることができるとされ、大発見であったIps細胞より優位であるとの発表もされました。更なる生命科学の発展や、医療現場への応用が期待されていました。
後悔データの矛盾や、世界各国で行われた追実験の失敗などを発端としてスタップ細胞に関する論文が取り下げられ、世間では「そんなものはなかった」という空気になりました。生物学の世界でも、一度論文が撤回された実験はなかったものとされ、取り上げられることもなくなってしまいました。しかし、理化学研究所が、論文発表者である小保方研究員に、STAP細胞作成の追実験を指示していたということをご存知でしょうか。一度「無い」とされたにもかかわらず、もう一度作ろうとする実験が行われていたのです。
ただ、この追実験は結局失敗に終わり、やはりSTAP細胞は存在しなかったのかということになりました。しかし小保方氏の自伝では、「追実験には成功していた」という記述も見られるため、まだ存在をあきらめていない人も多くいるようです。
そんな中、スタップ細胞に関するあるニュースが飛び込んできました。point 566 | 1

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写真:m-miya.net

◼︎ドイツの大学が実験に成功した?

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写真:henmi42.cocolog-nifty.com

2016年の3月、ドイツの一流大学であるハイデルベルク大学の研究グループが、STAP細胞に関する論文を発表しました。名門大学がスタップ細胞の追実験を行ったとして、生物学界では大きなニュースになりました。
スタップ細胞の論文自体は撤回されてしまいましたが、酸性での刺激によって細胞が万能性を獲得するというのは、がん関連の分野において興味深い分野であるため、再現実験を行ったという内容が序論に記されています。
実験は、小保方氏が使用した細胞とは異なり、がん細胞の一種である別の細胞を使い、それを酸性の条件にさらし実験を試みました。しかし結果は失敗。そこで、小保方氏の論文にあった方法とは別の刺激方法を用いたり、使用する試薬を変えてみたりとオリジナル性を加えて実験をすすめたそうです。すると、一部の細胞に多能性を獲得させることが可能になりました。
ここまで読むと、スタップ細胞はあったんだ!と思う人がいるかもしれません。注意したいのは、そうではないということです。第一にドイツの研究者グループの実験では、小保方氏が行ったのとは別の方法で実験を行っているため、そもそもスタップ細胞を作ったものではありません。また、この実験では、当初言われていたスタップ細胞の特徴すべてが備わった細胞が完成したわけではなく、一部が似通っている細胞が完成しただけでした。point 596 | 1

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写真:jiji.com

◼︎まとめ

ハイデルベルク大学の論文によって、スタップ細胞に対する注目が再び集まるかもしれません。しかし注意しなければいけないのは、科学系のニュースは、多くの人に分かりやすく伝えなければいけないため事実ではないことが報道されることが多々あるという点です。また、マスコミによって作り上げられるイメージが先行した報道が行われてしまうと、科学の大切な部分が見過ごされてしまうこともあります。
科学に関心を持つ人が増えるのは大変良いことです。だからこそ、不確かな情報に惑わされないようなリテラシーを身に付けていく必要がありそうですね。point 322 | 1

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