今年、東海道新幹線の男性運転士が走行中にトイレに行くため約3分間、免許のない車掌と入れ替わり、運転室を離れていた問題で、JR東海の金子慎社長は定例記者会見で「本来は指令と打ち合わせるべきで(運転士が)勝手なことをしたのが一番の問題だ」との見解を示しました。
当時、男性運転士の運転する「ひかり」は、時速約150キロで走行中で、乗客160人ほどを乗せていました。 JR東海によると、運転士は急な腹痛に襲われ、トイレに行くために男性車掌を呼び出し「機器には触れず運転席にいてくれ」とだけ伝え、車掌のみを運転室に残し、運転席からおよそ25mも離れた場所にある1号車後方のトイレに向かいました。呼び出された車掌は免許を持っておらず、およそ3分間、7,6キロにわたり運転士不在のまま走行していたそうです。
社内規定として、「運転中に体調不良になった場合、指令所に報告して指示を仰ぐ」と定められていましたが、この男性運転士は報告せず、自己判断でトイレに向かったといいます。報告しなかった理由として、「プロとしてこんなことで列車を止めるのが恥ずかしいと感じた」と話しているそうです。
現在、新幹線の運転室に入ることができるのは、基本的に運転士の1人だけで、車掌がサポートに入ることもありますが、車掌の中でも運転免許を持っている人といない人がいるそうです。今回、運転席を任された車掌は免許を持っていませんでしたが、免許をもっていない車掌でも「停車させる必要に迫られた」場合は、非常ブレーキを使用したり新幹線を止めることが許されています。
現在は、運転士が1人体制になっていますが、実は1991年ごろまでは運転士は2人体制で走行していました。理由として、現在よりも乗車時間が長かったこと、当時の車両はまだ不具合も多く、運転中に点検や修理をする必要があったためだそうです。その後、列車の改良や遠隔操作の進化などにより、現在の1人体制に変更されました。
JR東海は「乗客の安全のためにも、体調不良などがあったとき、必要に応じて新幹線を止めたり運転士を交代することは構わない。今回の問題は指令所に連絡を入れていなかったこと。今後徹底させる」ということです。さらに、JR東海の金子社長は「(運転士は)『言いにくかった』ということだが、ちゅうちょなく連絡すればいい」と述べ、乗務員への意思統一を図っているとしました。
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