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    Categories: LIFE

【東日本大震災】冷水に浸かったまま15時間耐え、車椅子の妻を助けた71歳


忘れてはならない東日本大震災は、もう7年が過ぎようとしている。この震災の犠牲者1万5千人以上のうち、実に90%以上が「溺死」、つまり津波に呑まれて死亡してしまった。その一方、津波で危うく命を落としかけながら九死に一生を得たケースも少なくない。今回は、冷水に浸かったまま15時間耐え続け、車椅子の妻を助けた71歳の感動エピソードをご紹介します。

高齢者夫婦に襲った突然の悲劇


写真:www.jiji.com

宮城県名取市の森勝寿さん(当時71)と直子さん(当時69)夫妻のエピソードは強烈だ。直子さんは30代で関節リウマチを患い、首・肩・肘・腰骨、膝などがすべて人工関節のため、自分では一歩も歩けない。勝寿さんは10年以上、わずかな年金で妻を介助してきた。そしてあの日、テレビを見ていた2人を大きな揺れが襲った。しばらくして津波警報のサイレンが鳴り響いたが、直子さんが動けないため避難所の小学校まで移動できず、その場に留まることしかできなかった。point 298 | 1

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地震の後にやってきた津波


写真:d.hatena.ne.jp

やがて2人を津波が襲い、濁流が部屋に流れ込んできた。その時、勝寿さんは壁に打ち付けられ、直子さんは水流で車椅子から投げ出された。すると勝寿さんは、ちゃぶ台にしがみつく直子さんの元へと泳ぎ着き、水に浸からないよう担ぎ上げた。水位が自分の胸まである状況で、ちゃぶ台を持ち上げ、手がかじかみ腕が悲鳴を上げても必死に耐え続けた。そして翌朝、空が白みはじめた5時半頃、ついに水が膝下まで引いてきた。勝寿さんは直子さんを下ろすと、瓦礫をかき分けて外に出た。変わり果てた景色を前に、ありったけの声で叫んで助けを求めたところ、近所の人に発見されたという。憔悴した2人が救出された時、津波発生からなんと15時間が過ぎていた。病院に搬送されて応急手当を受けた直子さんの体温は33度しかなかったが、なんとか一命をとりとめた。point 430 | 1

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お父さんの絶対的な愛が命を救った


写真:www.cosmopolitan.com

「わたしはお父さんがいないと何一つできない。生きてるのが奇跡的です。助かったのが不思議でならない」(週刊朝日、2011年3月28日)と直子さんは語る。まるで小説でも読んでいるかのような信じ難い話だが、このようなことは、夫の妻に対する絶対的な愛と、妻の夫に対する絶対的な信頼なくして起きなかった奇跡といえるだろう。

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